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2015年11月23日月曜日

秋月部品でゲートドライバを作る

こんにちは。最近朝の寒さに服装を合わせると昼暑くて困ります。kの方です。
今日は祝日で、社畜でも学畜でも無い僕は悠々と休みを楽しんでおります。

題名通り、最近秋月で良さ気な部品が新商品として入っているので、そいつを利用してパワー回路の要、ゲートドライバを作ろうというお話です。当初は真面目に作っていたのですが途中でミスが多かったので小学生の工作みたいな部分が多々ありますのでご注意願います。

僕が目をつけたのはこの部品、
写真の一番右にあるSOPのPchNch各一個入りのMOSFETモジュールです。一個50円と経済的です。で、今回使用する主要な部品もお写真に写っております。左からSOP→DIP変換基板、ピンヘッダ(足細い)、前述のMOSFETモジュールです。
そもそもゲートドライバといっても色々あるわけですが、今回は制御系の信号を電流増幅し、ハーフブリッジやフルブリッジ等で使用するパルストランス(ゲートドライブトランス)を駆動する用途を考えております。そこで便利なのがトランジスタやMOSFETによるプッシュプル回路なのですが、トランジスタは蓄積効果による遅延、MOSFETは速度は申し分無いのですが安価にコンプリメンタリペアが入手しづらい点、が難点だと思います。MOSFETのプッシュプルは別にコンプリじゃなくてもいいのですが、特性が揃ってる方が良いですし秋月に入荷したのが丁度良かったってのが大きいです。
さて、取り敢えずSOPをDIPに変換してしまいます。
 ブレッドボードに挿すといい感じに固定されるということを発見した功績から私は後日賞を受賞すると思います。既出だと思います。

SOPって意外と小さいですよね。

適当にハンダ付けしてしまいましょう。僕は数に余分を持たせて部品を購入したので失敗しても大丈夫です。

余談ですがこの部品を2つ作った時点で1個なくしまして合計3個作りました。

これでめでたくMOSFETモジュールがDIPで手軽に扱えます。ちなみにこの変換基板だとICの放熱がイマイチだと思うのでプリント基板や生基板削ったりデキる人はそうやって作って放熱をきちんとすると良い結果になるのでおすすめです。

ちなみに生基板を削ってみた場合
 こんな感じでパターン描いて

適当に削って

ハンダ付けして終了です。なお写真のパターンはミスがあるので。

さて、このままMOSFETのプッシュプルを組んでみた人ならわかると思いますが、トランジスタと同様にNとPのゲートをまとめて動作させると、50kHz程度で無負荷でもMOSFETモジュールがかなり発熱します。ちなみに周波数を上げると更に発熱(=損失)が増えます。MOSFETのパワー回路なら300kHz、IGBTでも150kHzくらいまではドライブしたいところですが、これでは負荷を繋がなくてもMOSFETモジュールが壊れそうです。僕も最初組んだ時、発熱がひどくて困ったのですが、MOSFETモジュール部分の消費電流や、無負荷時の消費電流を調べていくとどうやらプッシュプルの上下素子の同時ONだということが判明しました。 

さて、ここでこの秋月素子のデータシートを拝見します。見るべきはゲート閾値電圧(Vgs(th)Gate Threshold Voltage)です。この電圧を超えるとFETがONし始めますよーという電圧です。当然Nchはこれ超えた時、Pchはこれを下回った(負電圧として大きくなる)時にONします。データシートを見るとN、Pchとも最小±1VでONし始める可能性がありますね。
ここで、PchNchそれぞれのゲート同士を一緒に接続して、そこに振幅12Vのパルス波を入力した時のことを考えてみます。
まず入力電圧が0Vの時はPchFETはソース接地なのでゲートに-12Vがかかることになり、これは-1Vより小さい値なので当然ONします。Nchはゲート電圧が0VなのでONしません。また、入力電圧が12Vの時はPchFETのゲート電圧は0V、Nchは12VなのでNchのみがONします。ここまでは何も問題はありません。
次にパルス波の立ち上がり、すなわち0→12Vになる瞬間です。理論上はパルス波の立ち上がり時間は無限に小さいので問題無いように思えますが、実際は立ち上がるのにも時間がかかります。ここで問題が起きます。0Vからゆっくり上がって1Vになった時、PchFETはゲート電圧が-12→-11VになっただけなのでまだONです。しかしNchFETはゲート電圧が0→1VになったのでここでONしてしまうかもしれません。ここで同時ONが発生するのです。同様の理由で立ち下がり時も同時ONが発生します。

ここまで文字だけで申し訳ないです。この問題を解決する回路が下の図です。
ゲート抵抗と並列に接続しているダイオードがミソです。PchFETはOFFする際ゲート抵抗の効果を受けずに高速にOFFし、NchFETも同様OFFする際に高速にOFFします。つまり両方ONだけを遅らせていることになります。こうすることで、入力の立ち上がり、立ち下がりにおいて今ONの素子がOFFしてから、OFFだった素子がONする、という動作を実現することができます。
この回路のダイオードと抵抗の効果はかなり大きく、無しで組むと50kHz程度+無負荷で触れないほど熱くなっていたMOSFETモジュールが、120kHz+600V200A二素IGBT子負荷でも暖かいくらいで済みます。上図の回路を2つ逆相で動かすのがオーソドックスかと思います。
ダイオードはスイッチングがそこそこ速い汎用ダイオードならなんでも使えると思います。抵抗の選定ですが、50Ωや100Ωではあまり効果がありません。経験がある方は驚かれるかもしれませんが、現状330Ωで前述の動作を満たしております。しかし動作を見た感じですともう少し大きくても良いかもしれないというところです。しかしあまり大きくし過ぎると今度はスイッチング損失が増えそうなので少々難しいところです。また実験を行って最適値が出たら追記します。

実験から470Ωくらいで良い感じです。


実際に作ってみた感じ。
 実はこれ盛大にミスっています。抵抗が51Ωで小さすぎな上、ダイオードの向きが逆です。

なんとか修正したもの。誰が見ても酷すぎるという感想しか出てこないなんじゃないでしょうか。

しかし、何はともあれ半完成です。FETモジュールの向きに注意しましょう。

 取り敢えず600V200A二素子入のIGBTモジュールのゲートを負荷にしてみます。ゲートドライブトランスは1:1でIGBTのゲート抵抗は4.7Ωです。100kHzドライブ時はゲート抵抗も熱々になります。

 あまり綺麗ではないですが一応電源電圧の13Vくらいまできちんと振れています。IGBTなら本当はもっと高く18Vくらいまで振らせるべきですね。レベルシフタ等も内蔵してもうちょっと実用的な回路にしていきたい所存。

 最後に立ち下がりと立ち上がり。IGBTモジュールの規定立ち上がり立ち下がり時間は上回っているので概ね問題なさそうです。

秋月で安価で購入できる部品である程度のゲートドライバが組みあがりました。良かった。

それでは、今日はこの辺で。

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