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2022年11月13日日曜日

プッシュプル回路のデッドタイムについて

お久しぶりです。
もう11月になってしまいました。

パルス信号のバッファとして、MOSFETのプッシュプル回路をよく使いますよね。
図1-こういうやつ

Nchが下で、Pchが上なので、入力した信号は論理が反転して出力されます。
この回路をパルス信号で駆動するとそれなりに貫通電流が流れてしまうというのは以前の記事(http://fellaboratory.blogspot.com/2015/11/blog-post_23.html)でも書きましたが、別の方法でも改善ができたので、記事にしてみました。
 
回路はこんな感じです。
図2-改善案回路図

ポイントはそれぞれのゲートをC結合で駆動しているところです。
このC結合によって、各MOSFETのソースを基準として正、負両方向に振れることになります。
ゲートスレッショルド電圧はNchで+数V、Pchで-数Vなので、ソース基準でゲート信号が正負に振れるようになったことにより、同時ONの瞬間がなくなります。実際はターンON、OFF時間があるので周波数を高くしていくとやはり貫通電流が発生するようにはなりますが…。
C結合しない場合と、する場合の貫通電流を比較してみます。

・入力信号
振幅:0-12V
周波数:200kHz
MOSFETはNchにIRF520、PchにIRF9530を使用しました。


図3-C結合無しバージョンの消費電流

まず図1の回路の無負荷時の消費電流です。
15V印加時、何も対策しないと5.3Wもドブに捨てていることになります。

図4-C結合有りバージョン(改善版)の消費電流

次に図2のC結合有りの回路の無負荷時の消費電流です。
かなり消費電流が減りました。 

出力の波形はこんな感じです。
黄色波形がNchMOSFETのゲート、緑波形が出力(OUT)の波形です。
いずれも200kHz、無負荷状態。
 
図5-C結合無しバージョンの波形

ちょっとリンギングがひどいのは前段のドライバとMOSFETのマッチングがよくないからと思われます。出力波形の立ち上がり、立ち下がりにもノイズが出ています。


図6-C結合有りバージョンの波形

同時ONがなくなったからか、出力の立ち上がり、立ち下がりのノイズがかなり減りました。
 
 
図7-C結合有りバージョンの波形(1MHz)
 
入力信号の周波数を1MHzまで上げても消費電流は0.02A程度でした。入力信号の波形がだいぶ汚くなってしまっていますが、出力はそれなりに出ています。
 
 
C結合による貫通電流の低減は効果がありそうなことがわかりました。
ただし難点としては、Dutyが50%から大きく外れるとうまく動作しなくなる点でしょうか。
テスラのようなDuty50%固定用途には使えるかもしれません。
 
 
それでは、